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衛生微生物講座
麻布大学生命・環境科学部
古畑 勝則 准教授

第1回 水道水中の貧栄養細菌

 私たちが毎日使う水道水−もちろん塩素消毒された水道水ですが、この中にたくさんの細菌が生息していることはあまり知られておりません。
 水道法では、水道水中に生きている細菌数を測定するために、細菌の増殖に必要な有機物を含む標準寒天培地を用いて36±1℃で24±2時間培養します。そして、この培養条件で培地に形成された細胞の塊(コロニー)を総称して「一般細菌」と呼んでおり、特定の菌種を指すわけではありません。これに対し食品衛生法では、食品および食品製造環境の細菌数を測定するために、通常は標準寒天培地を用いて35±1℃で48±3時間培養した際のコロニー数を「一般生菌」とし、微生物汚染の程度を示す指標のひとつとしています。
また、一般細菌はあくまでも衛生学的な指標であるため、検査には36±1℃、24±2時間という培養条件が採用されていますが、実際にはこの培養条件では検出されない細菌が水道水中に多数存在しています。たとえ一般細菌が検出されない水道水であったとしても、標準寒天培地よりも栄養分の少ないR2A培地などを用い、20〜30℃のやや低めの温度で7日間以上培養すると、たくさんのコロニーが形成されることが多く見られます。一般にこれらを「貧栄養細菌」と呼びますが、水道水の公定法である上水試験方法では「従属栄養細菌」と呼ばれ、「有機物を比較的低濃度に含む培地を用いて低温で長時間培養したとき、培地に集落を形成するすべての細菌」と定義されています。
 通常、特殊な環境に生育している微生物を検出するためには、その環境に類似した培養条件を設定することが重要です。したがって水道水中に生息している貧栄養細菌を検出する場合は、20〜30℃のやや低めの温度で、栄養分の少ない培地を用いて培養するのが適当です。貧栄養細菌も一般細菌と同様に、上述のごとく培養条件によって定義された細菌のグループですので、貧栄養細菌という種類の細菌がいるわけではなく、実際には様々な種類の細菌が同一試料から同時に検出されます。
 一例として、全国の病院内水道水からの貧栄養細菌の分離状況を図1に示しました。全体では貧栄養細菌が271試料中222試料(81.9%)から分離され、非常に高率に生息していることが明らかとなりました。また、水道水中の遊離残留塩素濃度別に貧栄養細菌の分離状況をみると、未測定の77試料を除き、0.1〜0.2 mg/Lから52試料(23.4%)と最も多く分離され、次に0.3〜0.4 mg/Lから45試料(20.3%)分離されました。遊離残留塩素が0.5〜0.6 mg/Lになると分離された試料は17試料(7.7%)と少なくなり、さらに高濃度の0.7〜0.8 mg/Lではわずか6試料(2.7%)から分離されたに過ぎませんでした。このように、貧栄養細菌の分離状況は残留塩素濃度が高くなるとともに分離率が低くなる傾向が認められました。一方、水道法で定められた0.1 mg/Lを維持していない水道水中から貧栄養細菌が分離されたのは、222試料中25試料(11.3%)でした。

【図1】病院内水道水からの貧栄養細菌の残留塩素濃度別分離状況
【図1】病院内水道水からの貧栄養細菌の残留塩素濃度別分離状況
※ 外円 : 全試料中の貧栄養細菌の分離数(分離率)
※ 内円 : 遊離残留塩素濃度(mg/L)別の分離数(分離率)

 さらに、図1で貧栄養細菌が分離された222試料中の細菌数別の分離状況を図2に示しました。全体では1〜9 CFU/mlが96試料(43.2%)と最も多く、次に10〜90 CFU/mlが54試料(24.3%)、100〜990 CFU/mlが38試料(17.1%)、1,000〜9,900 CFU/mlが30試料(13.5%)でした。さらに、10,000 CFU/ml以上の試料が4試料(1.8%)ありました。このように、菌数が多くなると分離率が少なくなりました。

【図2】病院内水道水からの貧栄養細菌数別の分離状況

【図2】病院内水道水からの貧栄養細菌数別の分離状況

 以上のように、塩素消毒された水道水中にもたくさんの細菌が生息していることがおわかりいただけたと思います。水道水は塩素によって「消毒」、つまり病気や腐敗を起こす可能性のある生物を死滅あるいは不活性化、除去しているだけで、すべての微生物が対象となる「滅菌」が行われているのではありません。したがって、通常は病気を起こさない微生物(水棲細菌)は生存しております。にもかかわらず、時として「塩素滅菌」という表現を見聞きすることがありますが、この表現は内容的にあり得ないものです。さて、それでは水道水中にはどのような性質を持つ貧栄養細菌が生息しているのでしょうか。それは次回にお話しします。

参考文献:古畑勝則、福山正文 病院内水道水からの貧栄養細菌の分離状況 防菌防黴, 34, 6, 323-328(2006)




古畑 勝則 准教授 古畑 勝則(ふるはたかつのり) 准教授
麻布大学生命・環境科学部
微生物学研究室

学位:博士(獣医学)
研究分野:環境微生物学、微生物生態学
代表著書:バイオフィルム(サイエンスフォーラム)、水ハンドブック(丸善)、
食品のストレス環境と微生物(サイエンスフォーラム)など
麻布大学のホームページ


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