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微生物を知ろう
微生物分類同定講座
東京大学分子細胞生物学研究所
横田 明 准教授

第1回 分類とは何か? 同定とは何か?

 現存する微生物は「種(species)ごとに表現形質や遺伝形質が異なっていますが、もともとは、これら「種」の起源というのは一つです。すなわち、ある一つの生命(始原細胞)が誕生して以来、30数億年の歳月をかけて生命が進化した結果、今のような多様な種に至っている訳で、互いに遠い、近いの差はあるものの、もともとは一つの系統でつながっているものです(図1)。

【図1】地球上への微生物の出現・進化
【図1】地球上への微生物の出現・進化

【表1】細菌の分類階級とその具体例

【表1】細菌の分類階級とその具体例


 この様々な系統を、類縁の遠い、近いで模式的に表現したものを分類体系といいます。その分類体系では「種」の概念が共有化できるよう、微生物の集合単位ごとに境界線を設けて個々の識別を可能としています。そのために微生物群の各性状について詳細な観察・調査を行い、様々な形質によって各系統の限界を定め、定義し、その系統に学名を与え(命名Nomenclature)、記載を行う作業のことを「分類(Classification)」といいます。微生物の分類における最小単位は「種(species)」 であり、「種」の集合が「属(genus) 」、「属」の集合が「科(family)」 というように、微生物の進化・系統を反映させ、それぞれの上位分類群ごとにまとめられています。ここで、このような「種」とか「属」といったものは概念的であるのに対し、実在するのは生物個体そのもの、すなわち「株(strain)」であるということは重要なポイントです。
 枯草菌(Bacillus subtilis)の例を用いて分類上の階級を表に示します(表1)。

 さて、微生物の分類は、従来、形態的特徴(コロニーの形状、細胞の形など)、生理・生化学性状(糖の資化性、生育温度・pHなど)、化学分類学的性状(菌体脂肪酸組成、キノン組成など)の違いに基づいて行われてきました。動植物では化石が存在するため、それをもとに進化・分類が議論されますが、微生物の場合、ほとんど化石が存在しないため、現存する個体の上記のような性状を調べて進化・分類を推察します。近年では、分子生物学や遺伝学的分析手法の進展により、DNAやタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列のような情報量が豊富な指標(情報高分子)に基づく系統解析の手法が発展したことによって、進化や系統を時間のパラメーターを用いた系統樹で表し、これに基づいて分類がなされるようになってきています。現在、系統解析を行う際に一般的に用いられている遺伝子として、細菌では16S rRNA遺伝子、真菌では18S rRNA遺伝子、28S rRNA遺伝子のD1/D2領域および両遺伝子の間に存在するITS領域などが挙げられます。
 このように微生物を「分類」することとは、その微生物の生物学上の位置付けを行うことであり、同時に微生物の種多様性を発見することでもあります。また、「分類」は分類群に学名をつけること、すなわち「命名(Nomenclature)を可能にします。学名は「二名法(binomial system)」に基づき、「属名(genus)」と「種形容語(epithet)」からなり、ラテン語で綴られます。通常はイタリック体で書かれます。命名には、ちゃんとルールがあって、何でも良いというわけではありません。
 一方、「同定(Identification、Determination)」 とは、「分類」と「命名」の実際的な応用であり、未知の分離株の性状を検査し、既知の種と比較をして、既知のどの種に含まれるかを決定して学名を選定することです。「同定」を行うことのメリットとしては、種名が明らかになることで既存の情報との照らし合わせによって分離された菌株の一般的な特徴を推定することが可能となります。往々にして「分類」と「同定」の手法は重複し、その使用に際しても混乱されがちですが、大意としては、「分類」では微生物群の整理と定義づけを主目的にし、「同定」では個体の分類体系との照らし合わせによる帰属を主目的にしたものになります。「同定」の行為が、結果として「分類」にあたるということもあります(分離株が新種であった場合など)。
 現在、解析対象となる微生物が多様化しているのに対して、「分類」や「同定」を行う際には、生物全体に共通していて汎用性の高い指標である遺伝子を用いた解析手法が主流となりつつあります。数十年前には数菌株しか決定されていなかった細菌の16S rRNA遺伝子の塩基配列は、現在ではほぼ全ての既知種について決定され、いまや日常の「同定」に用いられています。一方で、これまでに人間の手によって分離され明らかになっている微生物は、自然界に存在する「種」に対してわずか数%に過ぎないといわれています。我々が未同定の微生物を手にしたとき、分類体系に関する十分な知識と同定技術とがあって、初めて正確な「同定」と新たな微生物への出会いが可能となるといえるでしょう。




横田 明 准教授 横田 明(よこたあきら) 准教授
東京大学分子細胞生物学研究所
細胞・機能情報研究センター
バイオリソーシス研究分野

研究分野:細菌系統分類学
代表著書:放線菌図鑑(朝倉書店)、微生物の分類・同定実験法(シュプリンガー・フェアラーク東京)など
横田研究室ホームページ


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