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微生物を知ろう
微生物分類同定講座
東京大学分子細胞生物学研究所
横田 明 准教授

第3回 細菌の種類(概論)

1. はじめに
 地球上で見出された細菌は2006年現在、約1,400 属、6,800種が知られています。しかし、核酸の分析に基づいた種数の類推から、実際にはその約10倍〜100倍の約40,000〜400,000種は存在するであろうといわれています。これは難培養微生物と呼ばれる、培養物として得るのが困難な種が非常に多いためと考えられています。表1に Bergey’s Manual 第2版(2001年)に掲載された真正細菌および古細菌の分類群の数を示してあります(真正細菌および古細菌については、第2回「微生物の種類(概論)」を参照してください)。

【表1】 Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology Second Edition(2001)に採用された分類体系(1999年までの総数)
【表1】 Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology Second Edition(2001)に採用された分類体系(1999年までの総数)


2. グラム陽性とグラム陰性の違い
 細菌は、大きくグラム陽性細菌とグラム陰性細菌とに分けて呼ばれることがあります。グラム陽性細菌の細胞は、グラム染色(クリスタルバイオレットなどの塩基性紫色色素で染色後、ルゴール液で処理する細菌の染色法)の際、アルコール処理を行っても細胞が青〜紫色を保持します。一方、グラム陰性細菌はグラム染色後、アルコール処理により脱色され、さらにサフラニンを用いて対比染色を行うと細胞は赤〜ピンク色を呈します。これは細菌の細胞表層構造の違いに基づくもので、グラム陽性細菌は一般に分厚いペプチドグリカン層を形成していることが、染色の保持に関与しています。図1にグラム陽性細菌とグラム陰性細菌の顕微鏡写真を示しました。
 現在の分類体系では、これまでグラム陽性細菌と呼ばれてきた細菌の大半は、アクチノバクテリア門(Phylum Actinobacteria)やファーミキューテス門(Phylum Firmicutes)に属しています。しかし、細菌の細胞表層構造は菌の種類によって様々であり、グラム染色性が必ずしも系統を反映しているとは限りません。つまり、Mycoplasma属のようにペプチドグリカン層を持たず、グラム染色性が陰性を示す細菌もファーミキューテス門に含まれており、このような細菌は「グラム染色性陰性のグラム陽性細菌」と表現される場合があります。一方、デイノコッカス−サーマス門(Phylum Deinoccocus-Thermus)に属するDeinococcus属はグラム染色が陽性であるのに対し、Thermus属は陰性を示しますが、これらの属はアクチノバクテリア門やファーミキューテス門とは系統的に大きく異なるため、グラム陰性細菌とされています。
※ Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology Second Edition Vol. 1(2001)

グラム陽性細菌 Staphylococcus aureus
グラム陰性細菌 Escherichia coli
【図1】 細菌のグラム染色性(左:グラム陽性細菌 Staphylococcus aureus, 右:グラム陰性細菌 Escherichia coli


3. 種(Species)の定義
 細菌の「種」は動物、植物および真菌類の「種」の定義とは異なり、細胞の形状やコロニーの色・形といった表現型のみに基づいて定義することは困難であり、また「種」の概念に関する統一された見解はありません。そこで便宜上、「種」の識別には2株(Strain)の細菌のゲノムDNA同士の相同性、すなわちDNA-DNA交雑形成率が基準として用いられており、一般的にDNA-DNA相同性が70%以上の場合、両者は同種であると認められています(図2)。しかしながら、DNA-DNA交雑形成試験は非常に操作が難しく、手間がかかる上に専門技術が必要であるため、容易には実施できません。そこで、簡易的な同定には、16S rRNA遺伝子塩基配列の情報がよく用いられています(微生物の同定については、第1回「分類とは何か?同定とは何か?」を参照してください)。16S rRNA遺伝子塩基配列の相同性とDNA-DNA相同性との相関関係が複数の研究者により報告されていますが、これらの報告を総合すると、16S rRNA遺伝子塩基配列の相同性が98.0%未満の場合、DNA-DNA相同性は70%以上を示さない、すなわち別種であると考えられています。一方、新たに、16S rRNA遺伝子塩基配列の相同性が98.7%以下の場合、DNA-DNA相同性は70%以上を示さないという相関性が見られることを根拠に、16S rRNA遺伝子塩基配列の相同性に基づいて種の識別を行うとの新しい提案もなされております。しかしながら、16S rRNA遺伝子塩基配列の相同性が98%以上の場合、必ずしも同種であるとは限らず、属によっては99%以上であっても別種の場合があります。このような場合、厳密な意味で同定をするためには、生理・生化学的性状、化学分類学的性状および近縁種間でのDNA-DNA相同性に基づき「種」の同定を行います。

【図2】DNA-DNA交雑形成
【図2】DNA-DNA交雑形成


 近年、「種」レベルの分類・同定のための手法としていくつかの方法が新たに開発、報告されています。例えばSSU rRNA遺伝子塩基配列のPCR-RFLP法、ITS領域の塩基配列、あるいは複数の各種タンパク遺伝子塩基配列との組み合わせによる手法などです。しかし、これらの手法でも同属内に多数の種をかかえる属(例えばBacillus属、Streptomyces属、Mycobacterium属およびCorynebacterium属など)では依然として種レベルの同定を容易にできない場合があります。そういった場合には、まず16S rRNA遺伝子塩基配列で近縁種を絞り、次いでそれらの種を識別するのに適切な指標(形態的特徴、生理生化学的性状、化学分類あるいはDNA-DNA相同性)に基づき同定するという手順が必要となります。
 以上のように、分類群によっては16S rRNA遺伝子の塩基配列は「種」レベルの同定のためには解像度が低い場合があり、一方、DNA-DNA相同性実験は情報のデータベース化は不可能で、技法上の問題点も多く抱えています。この問題を克服するため、「種」のレベルの同定のためにgyrB 遺伝子などの配列を利用する試みが現在精力的に行われています。
 さて、次回は細菌の門レベルの特徴について紹介したいと思います。




横田 明 准教授 横田 明(よこたあきら) 准教授
東京大学分子細胞生物学研究所
細胞・機能情報研究センター
バイオリソーシス研究分野

研究分野:細菌系統分類学
代表著書:放線菌図鑑(朝倉書店)、微生物の分類・同定実験法(シュプリンガー・フェアラーク東京)など
横田研究室ホームページ


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第1回 分類とは何か? 同定とは何か?
第2回 微生物の種類(概論)
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