微生物分析サービス
資料請求・お問い合わせ
三井農林株式会社資料請求・お問い合わせ
MMIDについて お知らせ 分析項目 ご利用方法 受託約款 関連情報 微生物を知ろう よくある質問
MMIDトップページ  >>  微生物を知ろう  >>  微生物分類同定講座
微生物を知ろう
微生物分類同定講座
東京大学分子細胞生物学研究所
横田 明 准教授

第4回 細菌の分類体系

 古細菌および真正細菌の高次の分類階級は、主に16S rRNA遺伝子に基づく分子系統の情報によって決められていると言って良いでしょう。図1に各系統群(門)より選択した代表菌種の分子系統樹を示しました。この系統樹では古細菌2門、真正細菌23門を挙げておりますが、これらはいずれも培養可能な株に基づいた系統群です。培養株は存在しないものの、自然界より16S rRNA 遺伝子クローンとして検出されているものも含めると、門の数は80以上存在するものと考えられています。今後の培養技術の進歩により、門の数−ひいては門以下の分類階級の総数は飛躍的に増大するものと思われます。

【図1】16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づく細菌および古細菌の代表菌種の分子系統樹、ならびに対応する門レベルの系統群
【図1】16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づく細菌および古細菌の代表菌種の分子系統樹、ならびに対応する門レベルの系統群
Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology Second Edition(2001)に採用されている古細菌2門および真正細菌23門を示した。2007年現在、新たにGammatimonadetesLentisphaeraeおよびTenericutesの3門が真正細菌の系統群として提唱されている。赤線で示された菌種は超好熱菌であることを示す。

以下に各門レベルの分類群について、簡単に説明します(以下の項目をクリックすると、それぞれの説明にジャンプします)。

目次
真正細菌
1. アクチノバクテリア門 (phylum Actinobacteria)
2. ファーミキューテス門 (phylum Firmicutes)
3. シアノバクテリア門 (phylum Cyanobacteria)
4. プロテオバクテリア門 (phylum Proteobacteria)
5. バクテロイデス門 (phylum Bacteroidetes)
6. アクイフェックス門 (phylum Aquificae)
7. サーモトガ門 (phylum Thermotogae)
8. サーモデスルフォバクテリア門 (phylum Thermodesulfobacteria)
9. クリシオジェネス門 (phylum Chrysiogenetes)
10. デイノコッカス−サーマス門 (phylum Deinococus-Thermus)
11. クロロフレクサス門 (phylum Chloroflexi)
12. サーモミクロビア門 (phylum Thermomicrobia)
13. ディクチオグロムス門 (phylum Dictyoglomi)
14. ニトロスピラ門 (phylum Nitrospira)
15. デフェリバクター門 (phylum Deferribacteres)
16. クロロビウム門 (phylum Chlorobi)
17. プランクトミセス門 (phylum Planctomycetes)
18. アシドバクテリア門 (phylum Acidobacteria)
19. ベルコミクロビア門 (phylum Verrucomicrobia)
20. フソバクテリア門 (phylum Fusobacteria)
21. クラミジア門 (phylum Chlamydiae)
22. スピロヘータ門 (phylum Spirochaetes)
23. フィブロバクター門 (phylum Fibrobacteres)

古細菌
1. メタン生成菌
2. (超)好熱菌
3. 高度好酸性菌
4. 高度好塩菌

真正細菌
1. アクチノバクテリア門 (phylum Actinobacteria)
 グラム陽性で染色体DNAのG+C含量が約55 mol%以上の高い値を有する細菌群は、近年の16S rRNA塩基配列に基づく分子系統のデータの蓄積により、これらをまとめてアクチノバクテリア門と呼ぶことが提唱されました。このグループには通常の桿菌、不規則な形状の桿菌、球菌および菌糸状の形態をもつ「放線菌」と呼ばれる菌群が含まれます。アクチノバクテリア門の多くは高度に発達した形態分化と培養特性の多様性を示し、また、抗生物質をはじめとする様々な生理活性物質を生産するという実用的な面からも放線菌は他の細菌と区別して取り扱われることが多いです。しかしながら形態分化が比較的未発達な一般細菌に近いものからカビに類似する形態分化を示すものまで様々な広範囲な細菌群を含んでおり、今日では他の一般細菌との間に厳密な境界を引くことができなくなってきています。

アクチノバクテリア門に属する主要な細菌(属)と典型的特徴


2. ファーミキューテス門 (phylum Firmicutes)
 ファーミキューテス門はグラム陽性で染色体DNAのG+C含量が25-55 mol%の範囲を有する菌群であり、代表菌属として偏性嫌気性菌であるクロストリジウム属(Clostridium)、好気〜通性嫌気性菌であるバチルス属(Bacillus)などが含まれます。好気性の菌種は呼吸鎖キノンとしてメナキノンを持つことで特徴付けられます。ファーミキューテス門の多くは芽胞(内生胞子、endospore)と呼ばれる、厚い殻(spore coat)を持つ耐久型細胞を形成します。(芽胞と放線菌が形成する胞子の違いについては、第2回「微生物の種類(概論)」を参照してください)。芽胞の形成は極めて複雑な一連の生合成過程を経ることから、芽胞を形成する絶対嫌気性菌を祖先型として、あるものはバチルス属のように好気条件での生育に適応する方向に、またスタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)および大部分の乳酸菌は芽胞形成能力を失う方向にそれぞれ進化したのではないかと推定されています。
 またファーミキューテス門にはマイコプラズマ属(Mycoplasma)に代表されるペプチドグリカン層を持たず細胞壁を欠く細菌群(モリクテス綱、Mollicutes)が含まれます。この細菌群は次の版のBergey’s Manual of Systematic Bacteriologyではファーミキューテス門から除外され、Tenericutes門に分類されることが提唱されています。

ファーミキューテス門に属する主要な細菌(属)と典型的特徴


3. シアノバクテリア門 (phylum Cyanobacteria)
 シアノバクテリアは植物と同じメカニズムにより酸素発生型の光合成を行うことからラン藻とも呼ばれ、長く慣例的に藻類の扱いをされてきましたが、系統分類学的に原核生物であることが明らかにされ、現在は細菌命名規約のもと、細菌分類の分野でも取り扱われています。シアノバクテリアは多様な形態的な分化がみられ、球形、楕円形、円筒形の細胞が単独あるいは集合して群体を作るもの、外生胞子を作るもの、内生胞子を作るもの、糸状体のもの、糸状体で異質細胞(heterocyst)および休眠細胞(アキネート、akinate)をもつもの、真分枝をもつものなど様々です。このような形態的特徴に基づいてクロオコックス目(Chroococcales)、プレウロカプサ目(Pleurocapsales)、ユレモ目(Oscillatoriales)、ネンジュモ目(Nostocales)、スチゴネマ目(Stigonematales)の5つの目に分類されていましたが、Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology Second Editionでは、一時的な処置としてSubsection I〜Vの5つのサブセクションに分類されています。


4. プロテオバクテリア門 (phylum Proteobacteria)
 この菌群は、以前「紅色細菌(purple bacteria)」と呼ばれていました。この菌群には色素(光合成色素)を生成する光合成細菌が含まれますが、近年の16S rRNA塩基配列に基づく系統解析により、紅色細菌は非光合成細菌を含む巨大な系統の中に散在していることが明らかとなりました。このことから、カール・ウーズはこの系統の細菌すべてが、元々は光合成能を有していたとするという仮説を建て、一つの巨大な細菌群として分類しました。「紅色細菌」は慣用名であるため、後にプロテオバクテリア綱(その後、門に格上げ)として正式に分類学的階級が与えられました。プロテオバクテリア門は細菌の門の中で最も記載種が多い分類群であり、生理・生化学的に多様な性質を持った菌種が含まれています。この門は16S rRNA塩基配列に基づき、アルファプロテオバクテリア綱(Alphaproteobacteria)、ベータプロテオバクテリア綱(Betaproteobacteria)、ガンマプロテオバクテリア綱(Gammaproteobacteria)、デルタプロテオバクテリア綱(Deltaproteobacteria)、イプシロンプロテオバクテリア綱(Epsilonproteobacteria)の5つの綱より構成されています。

プロテオバクテリア門に属する主要な細菌(属)と典型的特徴


5. バクテロイデス門 (phylum Bacteroidetes)
 この菌群は偏性嫌気性であり、動物の腸管、口腔、ルーメン(反芻動物の第一胃)などの主要構成菌であるバクテロイデス属(Bacteroides)、好気性または通性嫌気性で、多くの菌種が黄色色素を生成するフラボバクテリウム属(Flavobacterium)、同様に好気性または通性嫌気性で海洋・土壌・廃水処理系などに分布するサイトファガ属(Cytophaga)、フレキシバクター属(Flexibacter)およびスフィンゴバクテリウム属(Sphingobacterium)などが含まれます。

6. アクイフェックス門 (phylum Aquificae)
 アクイフェックス門は16S rRNA塩基配列による系統分類において、真正細菌の中で最も深い分岐に分類されている菌群です。熱水泉より分離される好熱〜超好熱性の微好気性細菌で、水素をエネルギー源として利用することができます。

7. サーモトガ門 (phylum Thermotogae)
 サーモトガ門は熱水環境および油層より分離される好熱〜超好熱性の嫌気性細菌で、名称の「トガ」(toga、古代ローマで用いられた上着)は、細胞の末端に鞘状の構造物をもつことに由来しています。

8. サーモデスルフォバクテリア門 (phylum Thermodesulfobacteria)
 サーモデスルフォバクテリア門は高温の消化槽、油層および熱水泉より分離される好熱性の偏性嫌気性菌で、外膜に突起を形成する特徴があります。

9. クリシオジェネス門 (phylum Chrysiogenetes)
 クリシオジェネス門は2007年現在、ヒ素に汚染されたヨシ湿原より分離された1属1種のみが知られています。16S rRNA塩基配列による系統分類において深い分岐に分類されているものの、その位置関係は不確定です。中温性の偏性嫌気性菌で、ヒ素を還元する特徴があります。

10. デイノコッカス−サーマス門 (phylum Deinococus-Thermus)
 中温性または好熱性で、強力なDNA修復機構を持ち、放射線に対して耐性を有するデイノコッカス属(Deinococus)、高度好熱性(至適生育温度70〜75℃)のサーマス属(Thermus)、好熱性(至適生育温度50〜65℃)のメイオサーマス属(Meiothermus)などがデイノコッカス−サーマス門に含まれます。デイノコッカス属は特殊な細胞壁を持つためグラム染色性陽性ですが、その他の属はグラム染色性陰性であり、前述のグラム陽性細菌であるアクチノバクテリア門とファーミキューテス門とは系統的に遠く離れて孤立した1群を形成しています。
 なお、Thermus aquaticusなどのDNA合成酵素は熱に対して非常に安定であるため、分子生物学におけるDNA増幅技術(PCR法)で利用されています。

11. クロロフレクサス門 (phylum Chloroflexi)
 クロロフレクサス門は細胞が糸状に連なり、滑走による運動性をもつ菌群です。この菌群には以前に緑色非硫黄細菌と呼ばれていた好熱性、嫌気〜通性嫌気性および酸素非発生型の光合成細菌が多く含まれますが、運動性を持たない菌群、中温性の菌群、および光合成能を持たない菌群も含まれます。 

12. サーモミクロビア門 (phylum Thermomicrobia)
 サーモミクロビア門は2007年現在、熱水泉より分離された1属1種のみが知られています。高度好熱性および好気性、幅が不均一な桿菌で、ピンク色の色素を生成します。

13. ディクチオグロムス門 (phylum Dictyoglomi)
 ディクチオグロムス門は2007年現在、熱水泉より分離された1属2種のみが知られています。高度好熱性、嫌気性の桿菌で、植物の細胞壁に含まれるキシランを分解する酵素(キシラナーゼ)をもつことから、パルプ漂白用耐熱性酵素の研究開発がされています。

14. ニトロスピラ門 (phylum Nitrospira)
 ニトロスピラ門は湾曲、ビブリオ様またはらせん型の構造をもつ菌群で、大部分は無機栄養細菌です。中温性、好気性の硝化細菌であるニトロスピラ属(Nitrospira)、中温性、好気性、好酸性の鉄酸化細菌であるレプトスピリルム属(Leptospirilum)、嫌気性、好熱性のサーモデスルフォビブリオ属(Thermodesulfovibrio)が含まれます。

15. デフェリバクター門 (phylum Deferribacteres)
 デフェリバクター門は中温〜好熱性、嫌気性で、直桿〜湾曲状、またはビブリオ様の構造をもつ桿菌です。鉄還元菌であるデフェリバクター属(Deferribacter)などが含まれます。

16. クロロビウム門 (phylum Chlorobi)
 クロロビウム門は偏性嫌気性および酸素非発生型の光合成細菌で、以前に緑色硫黄細菌と呼ばれていた菌群です。硫化水素を硫酸塩に酸化する際、硫黄を細胞外に排出するため、顕微鏡観察下では硫黄の顆粒が観察されます。一般に沼や湖の深層など、無酸素で光が弱く、硫化水素を含む場所に生息しています。

17. プランクトミセス門 (phylum Planctomycetes)
 プランクトミセス門は主に水環境に生息する好気性細菌で、発芽により増殖することや、ペプチドグリカンをもたず、細胞壁が多量のタンパク質から構成されるなど、特徴的な形態を有しています。

18. アシドバクテリア門 (phylum Acidobacteria)
 アシドバクテリア門は土壌や堆積物、海水、酸性の泥炭など、幅広い環境から16S rRNA遺伝子クローンが検出されており、プロテオバクテリアに匹敵する巨大な系統となる可能性が示唆されていますが、そのほとんどは培養不可能であることから、これまでにわずか4属4種しか認められていません。

19. ベルコミクロビア門 (phylum Verrucomicrobia)
 ベルコミクロビア門は細胞表面にこぶ状または柄状の構造をもつ細菌で、水環境など様々な場所に生息していると考えられておりますが、現在のところ培養不可能な菌が多く、詳しいことはよく分かっていません。

20. フソバクテリア門 (phylum Fusobacteria)
 フソバクテリア門は偏性嫌気性の桿菌で、主に腸管や口腔に存在し、一部の菌種はヒトへの病害性を示します。糖を発酵して酪酸、乳酸、プロピオン酸などを生成します。

21. クラミジア門 (phylum Chlamydiae)
 クラミジア門は偏性細胞内寄生性の菌群で、ヒトを含む動物を宿主とし、様々な疾患の原因となります。この菌群は小さく堅い細胞壁をもつ感染型の細胞から、大きく柔軟性のある細胞壁をもつ非感染型(増殖型)の細胞へ転換する、2つの生活環を有する特徴があります。

22. スピロヘータ門 (phylum Spirochaetes)
 スピロヘータ門は運動性を有する、一般に細長いらせん状の菌群で、一部の菌種は長さ250µmにもなります。この菌群は鞭毛が菌体内部に存在する点で他の運動性を有する細菌と大きく異なります。periplasmic flagellaと呼ばれるこの鞭毛が回転することで細胞にねじれが生じ、這うような運動をするものと考えられています。淡水や海水、沼などの水環境に生息し、また一部の菌種はヒトを含む動物の体内に共生および寄生します。

23. フィブロバクター門 (phylum Fibrobacteres)
 フィブロバクター門は偏性嫌気性、桿〜球状の菌群で、哺乳類の盲腸およびルーメンに存在します。セルロースを分解し、コハク酸と酢酸を生成します。

古細菌
 古細菌は16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づき、クレンアーキオータ門(phylum Crenarchaeota)およびユーリアーキオータ門(phylum Euryarchaeota)の2門に分類されます。また、生理・生化学的にはメタン生成菌、(超)好熱菌、高度好酸性菌、高度好塩菌に分類することができます。ただし最近の研究ではこのような特殊な環境下だけでなく、中低温域の土壌および海洋など、広く一般環境に存在することが示唆されております。


メタン生成菌
 メタンを生成することでエネルギーを得る菌群で、ユーリアーキオータ門に属します。湖沼、水田、海洋、ルーメン、シロアリの後腸およびヒトなどに常在します。中温性、偏性嫌気性、湾曲または直桿状の桿菌であるメタノバクテリウム属(Methanobacterium)などが含まれます。

(超)好熱菌
 好熱性および超好熱性の性質を示す菌群で、クレンアーキオータ門とユーリアーキオータ門の両門に含まれます。クレンアーキオータ門に属し、好気性のエロピルム属(Aeropyrum)(至適生育温度90〜95 ℃)、ユーリアーキオータ門に属し、偏性嫌気性の球菌であるパイロコッカス属(Pyrococcus)(至適生育温度100 ℃付近)などが含まれます。

高度好酸性菌
 好酸性、好熱性および好気性を示す菌群で、クレンアーキオータ門とユーリアーキオータ門の両門に含まれます。クレンアーキオータ門に属するスルフォロブス属(Sulfolobus)(至適pH1〜5.5)、ユーリアーキオータ門に属し、球形〜菌糸状で、細胞壁が欠損しているサーモプラズマ属(Thermoplasma)(至適pH1〜2)などが含まれます。

高度好塩菌
 高濃度のNaCl存在下(通常1.5M-約8.8 %以上)でのみ生育可能な菌群で、ユーリアーキオータ門に属します。中温性、好気性〜通性嫌気性の桿菌であるハロバクテリウム属(Halobacterium)(至適NaCl濃度約17.5〜30.4 %)などが属します。





横田 明 准教授 横田 明(よこたあきら) 准教授
東京大学分子細胞生物学研究所
細胞・機能情報研究センター
バイオリソーシス研究分野

研究分野:細菌系統分類学
代表著書:放線菌図鑑(朝倉書店)、微生物の分類・同定実験法(シュプリンガー・フェアラーク東京)など
横田研究室ホームページ


バックナンバー

第1回 分類とは何か? 同定とは何か?
第2回 微生物の種類(概論)
第3回 細菌の種類(概論)
ページトップへ



三井農林株式会社の微生物分析サービスのホームページです
リンクサイトマップご利用にあたってプライバシーポリシーCopyright (c) 2005 Mitsui Norin Co.,Ltd. All Rights Reserved.