紅茶の香り成分“ホトリエノール”の摂取がストレス緩和に有効

~ホトリエノール含有食品の経口摂取により、乱れた自律神経系のバランスを整え、
ストレスを緩和することが示唆~

ニュースリリース
2023/11/08

三井農林株式会社(所在地:東京都港区 代表取締役社長:佐伯 光則 以下、当社)は、同社R&D本部の主導の下、ダージリン紅茶に特徴的な香気成分“ホトリエノール”の経口摂取がストレスに与える効果について明らかにしました。 “ホトリエノール”含有食品の摂取は、日常のストレスで過剰に高まった交感神経活動を抑制し、副交感神経活動を高めることが明らかとなり、ストレス緩和効果が示唆されました。
今回の研究成果は、薬理と治療(ライフサイエンス出版)に論文掲載され1),2)、研究成果の一部を日本食品科学工学会 第70回記念大会(2023年8月24~26日)にて発表しました。

概要と背景 

三井農林は、筑波大学 矢田教授の研究指導のもと、紅茶の香りの有効性について研究を進めてまいりました。これまでの研究により、ダージリン・セカンドフラッシュの香りには自律神経系の交感神経活動を抑制し、副交感神経活動を優位にするリラックス効果があること、さらにダージリン・セカンドフラッシュに特徴的な香り成分“ホトリエノール”がこれら効果に関与していることが示唆されました。そこで、“ホトリエノール”の摂取が日常ストレスに与える影響について臨床試験を行い、ストレス緩和効果があることを明らかにしました。今後は機能性表示食品の開発などヘルスケアへの展開が期待されます。

研究トピックス 

1.ホトリエノール含有食品を単回摂取することで、非含有食品と比較して、交感神経活動を抑制し副交感神経活動を優位にすることを確認しました。さらに、2週間の継続的な摂取により、ストレスの生理指標である唾液中コルチゾールを減少させることが確認され、日常生活で生じるストレスに対して緩和効果が明らかとなりました。

ホトリエノールの経口摂取が自律神経活動に与える効果のグラフ
ホトリエノールの経口摂取が自律神経活動に与える効果のグラフ
ホトリエノールの経口摂取が自律神経活動に与える効果のグラフ
ホトリエノールの継続的な経口摂取が唾液ストレスマーカーに与える影響のグラフ
ホトリエノールの継続的な経口摂取が唾液ストレスマーカーに与える影響のグラフ

2.ホトリエノール含有食品を単回摂取することで、非含有食品と比較して、重心動揺(軌跡長)を減少させることが明らかとなり不安感を軽減していることが示唆されました。

ホトリエノールの経口摂取が中枢神経系に与える影響のグラフ
ホトリエノールの経口摂取が中枢神経系に与える影響のグラフ

3.ホトリエノール含有食品を単回摂取することで、非含有食品と比較して、日常生活のストレスによる免疫機能の低下を抑制することが明らかとなりました。また、オキシトシンを増加させ快適感を高めることが明らかとなりました。

ホトリエノールの経口摂取がs-IgAおよびオキシトシンに及ぼす影響のグラフ
ホトリエノールの経口摂取がs-IgAおよびオキシトシンに及ぼす影響のグラフ
ホトリエノールの経口摂取がs-IgAおよびオキシトシンに及ぼす影響のグラフ

掲載情報
1) 紅茶成分ホトリエノールの経口摂取が自律神経系,中枢神経機能に及ぼす影響―ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験―. 薬理と治療 2022; 50: 247-56.
URL:https://www.pieronline.jp/content/article/0386-3603/50020/247
2) ホトリエノールの経口摂取による精神的ストレスおよび唾液バイオマーカーに及ぼす影響―ランダム化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験―. 薬理と治療 2022; 50: 421-31.
URL:https://www.pieronline.jp/content/article/0386-3603/50030/421

著者について

鈴木萌人
三井農林株式会社 R&D本部 基礎開発部 機能性開発室
2020年 三井農林株式会社に入社。紅茶の香りの機能性に関わる研究に従事。

矢田幸博
筑波大学大学院 人間総合科学学術院 客員教授
1984年 花王石鹸株式会社(現:花王株式会社)に入社。皮膚生理機能に関する基礎研究に従事。この間、留学を経て、1992年 医学学位習得)。1995年に当時のスキンケア研究所に転属。2001年 ヒューマンヘルスケア研究所にて睡眠研究、香り研究および温熱生理研究によるヘルス&ビューティーの開発研究に従事(主席研究員として2023年3月退職)。2010~2021年まで久留米大学大学院心理学研究科客員教授、この間、タイ王立皮膚科学研究所の特別研究員、中国やインドネシアのウダヤナ大学医学部の客員教授等を歴任。2011年より筑波大学大学院人間総合科学学術院教授を兼務(~2023年3月退官)。現在は、同大学院の客員教授として研究支援や学術指導に邁進中。研究分野は、皮膚有効性研究、温熱生理研究、国内外の生活者実態研究、香気成分の有効性研究、高齢者研究、睡眠研究、ストレス評価研究など。著書は、近著「不定愁訴の統合生理学と商品開発~美・健康・老化予防と有効性評価試験」など多数。

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